フードバトルに焦がれた中学生の秋

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熱狂の2001年

2001年の春。

伝説的なテレビ番組が産声をあげた。

「Food Battle Club」

フードバトルクラブ。通称FBC。

90年代から2000年にかけてブームの火がついていた"大食い"

FBCの開催。そして、小林尊、白田信幸(ジャイアント白田)、射手矢侑大(ドクター西川)、高橋信也(元サイバーエージェント執行役員)など、スター選手の登場と"早食い"要素を含む刺激的な内容によりブームの火は一気に爆発し、火柱となった。

私、ひいては中学のクラスメイトみんなもご多分に漏れず、熱狂の渦に飛び込んでいた。

FBCの、まるで格闘技かのような煽りに男子たちは熱狂していたし、"底知れぬ貴公子"小林尊の甘いマスクに吸い寄せられ女子たちも熱心に視聴しては、うっとりしていた。

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フードバトルブーム

「たくさん食べる」

もしくは

「はやく食べる」

ただ、挑戦するだけなら中学生にでも真似できる点がクラスメイトの男子たちにウケていたように思う。

私の通っていた中学校は給食制度であって、さらには夏場のぬるくなった牛乳に代表される不人気メニューがしょっちゅう、たくさん残ってしまっていた。

これに目を付けたのが私を含む大食い好きのグループ。

山岸くん(仮)、青野くん(仮)とちょっとふくよかな男子や、しちほだ(私)のようなヒョロガリがいたり、この様相は体型問わずさまざまな選手がいた大食い界の縮図そのものだった。

そんな大食いフリークスは、日々、残り物をかっ喰らい、競いあった。

時には限界の量に挑み、時には限界の早さに挑んだ。

私なぞは、平均よりも食べられはしたが、他のメンバーに比べあまり入らないので、大食い勝負を吹っ掛けては返り討ちにされていた。

途中からは実力差に諦めを覚え、早食い早飲み屋にシフトして活動していた。

大食いフリークスの中でも山岸くん、青野くんがべらぼうに食べられる逸材で、特に山岸くんは負け知らずの大食いモンスターだった。

そして、彼はある日、自分自身との勝負に挑むことにした。

負け知らずの彼の唯一のライバルは己自身の限界という壁だったのだ。

 

山岸、瓶牛乳 x 12本に挑戦

給食で提供されていた牛乳は200mlの瓶タイプ。

これが1ダース、12本となると2,400ml2Lを超える量だ。

給食の時間に開催されるフードバトルには、提供された通常の給食メニューを完食してからおこなう、という暗黙のルールがあった。

そのため、山岸くんがこの挑戦に成功したとなると3L近いものを胃に納めることになる。

これはいくら食の太さが自慢であっても、中学生にはなかなかに厳しいチャレンジだ。

だが、山岸くんの目は燃えていた。

季節は秋ごろとあり、牛乳もぬるくなるような日がなく、12本もの余りを確保するのが難しくなっていた。

この日を逃せばしばらく牛乳の挑戦はお預けとなるだろう。

給食1食を食べ終え、ますます集中力が増す山岸くん。

 

山岸「じゃあ、始めるわ......。」

静かに、厳かな声色で山岸くんがチャレンジ開始を呟いた。

 

1本。2本。3本......。

牛乳瓶は、あっという間に空になり、透明の瓶となる。

 

半分を胃に納めるころには大食いフリークスのみならず、クラスみんなが熱い視線を送っていた。

しちほだ「いける!いけるよ、山岸くん!!」

青野「ペース崩すな。落ち着いていけ」

思い思いの声援を送っていた。

それに目線で答える山岸くん。

 

かつて、この中学校でこんなに熱い一体感があっただろうか。

否!

我々は入学から今までにおいて、一番の、一番熱い一体感を生み出している。魂と魂が共鳴し、ぶつかり合っている。

 

残るは3本......。

2本......。

1本......。

 

カンッ

 

空になった瓶を机に叩きつける音が響き。

 

山岸「やったぞ......。」

内に秘める熱いソウルを必死に抑えた山岸くんのクールなささやき。

 

ややあって、教室がドッと沸いた。

 

「山岸すげー!」「マジかよ!やべーよ!」「え?山岸くん、全部飲んじゃったよ?」「すごーい」

 

大食いフリークスも山岸くんを囲って成功を喜ぶ。

 

しかし。

段々と顔が青ざめる山岸くん。

山岸「う......。」

短くうめくと廊下に設置された水飲み場へ駆け出してしまった。

 

「おぁぁっ!」

\どちゃちゃちゃー/

心配になり祭りの参加者がみな、山岸くんの安否を確認すべく廊下に飛び出すと......。

 

 

バ......。

 

 

バーストオオォォォーーーーーーッッッ!!!!!
まあ、どちゃちゃちゃー、って音で気がついていたんだけども......。

 

しかし、なんと水飲み場に広がっていたのは真っ白な、牛乳そのもので他の不純物は一切なかった。

世界の果てまでイッテQ!、でいうところの"キラキラ"の処理も必要ないくらいまごうことなき牛乳だ。

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参考:D-NEWS

 

頑張った......。山岸くん、牛乳だけは出てしまったが、ほかをよく堪えたぞ......。

驚いたのはこの後の山岸くんの様子。

気持ち悪そうにうずくまるわけでもなく、ただただ、このチャレンジが無効と化してしまったことをひたすらに悔やんでいた。

(こ、こいつ......。本物のフードファイターだ......!)

この一件は、すぐに笑い話の鉄板ネタになり、山岸くん本人も「あれは飲みはじめる前に食べたものをオトしておくべきだった」などとその筋の人間みたいなことを言いながらはにかんでいたし、いい思い出になった。

このあと、大食いブームはほどなくして終息してしまうわけだが、私はこのブームの渦中を、給食が提供される中学生時代に過ごせて本当に幸せだったと思う。

偶発的に集まった何十人の人間がみんな同じことにハマるシチュエーションってもうないんじゃないかなあ。

とにかく。あの"大食いブーム"の瞬間、私たちは全力でエンターテイメントを咀嚼し、楽しんでいた。

 

※当時、私の中学校でも水分を持っていかれるパンに代表される食材や餅の類いはヤバいという認識があり、基本的には本稿で取り上げた牛乳や、麺類、汁物、ご飯もので競技しておりました。
※また、固形物での競技の際は牛乳瓶を必ず1本用意しておいて、いつでも水分を補給できるように配慮しておりました。

 

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