はじめに
見慣れぬ女子高生4人がこれから135分間、どのような物語を紡いでいくのか、期待と不安が入り交じりスクリーンを見つめていました。
そこに颯爽と登場したハルハラハル子。新谷真弓氏が演じるハルハラハル子の声がハルハラハル子のままだった。私は何よりそこに感動し、以降ずっと興奮しっぱなしでした。
なので、今、ネットに溢れる評価とはかなり差異があると思うし、私の中のフリクリとは何かと問うたときに新谷真弓氏の演技がかなりのウェイトを占めており、この時点でチケット代は楽しんだと感じたため相当甘めな評価になっていると思われます。
極力ネタバレしないように振り返っていきますが、この辺りを加味した上でゆるーく読んでいただけると幸いでございます。
フリクリ各作品は以下の表記とします。
- OVA版フリクリ → OVA
- フリクリ オルタナ → オルタナ
- フリクリ プログレ → プログレ
何が良かったのか
新谷真弓氏の演技
正直、上映135分間はこの為にあったと言って過言ではないです。
舞台挨拶にて新谷真弓氏はハルハラハル子のキャラクターについて脚本レベルでの指摘をしている旨の発言しており、自らが演じるキャラクターへの愛情、熱量が伺える。
一度、終わっている、しかも完結から17年も経過した作品のキャラクターを再演するにあたって様々な葛藤があったと思われるが、むしろそういった側面がハルハラハル子に深みを与えるファクターになっている。
物語
ネットでは、フリクリかどうか以前に作品として一歩及ばないという意見が散見されますが、私としてはぐっとくるシーンもいくつかあって、若いって良いな、って噛み締めながら楽しめました。少しずつ散りばめていた小ネタをラストに回収するような進行もわりと好み。
普段はギャグテイストなのにたまに感動狙う回を放り込んでくる作品ってあるじゃないですか。こち亀とかちびまる子ちゃんとかで。ああいうの好きなんですよね。ハル子がとっちらかしてふざけてるんだけど、最後はなんとなく女子高生4人組に寄り添ってくれるような構図はまさにそれかなと。
登場人物を順番に掘り下げていくのもテンプレートで人によっては退屈ではあるけれど、アタマ空っぽにして委ねられる感じがそれはそれで心地よい。
センシティブな感触
私はもうどちらかと言うとおじさんの仲間なので女子高生4人組の青春は眩しかった。
セブンティーンの友達や恋人とのつながり、将来への期待と不安、そういった特有の感触を感じられたかと。ちょっとしたすれ違いが後に大きな衝突に繋がったり、10代のヒリヒリした感覚が遠い昔のようで自分の過去を振り替えって感傷に浸れました。
何がイマイチだったか
ハルハラハル子の行動原理
ちょっとふざけた人生のよき先輩的な立ち位置が物語においては良い点ではあったものの、ハルハラハル子というキャラクター単体にフォーカスしてみるとちょっと腑に落ちないというか。
OVAではアトムスクという、絶対的な目的があり、その為であれば周りのことはどうだっていいというようなキャラクターだったと思うのですが、オルタナのハル子は何だかウェットです。
近所の面倒見のいい姉ちゃんです。
女子高生4人の問題に首を突っ込んでいくのですが、イマイチその先に繋がってこない。地球に固執する理由もよく分からない。
容姿やしゃべり方なんかは完全にハルハラハル子なんだけど、なんかやっぱりハルハラハル子じゃない、そんな感じ。
ただ、まあ、オルタナがOVAの前日嘆なのか後日嘆なのか分からないし、プログレで合点がいくようなネタが散りばめられているのかも知れないのであまり強く否定はできない。
BGM
the pillowsの楽曲が続投しており、今作にて初めて利用された楽曲についても好きな曲だったので嬉しかった。
嬉しかったのだが、なんか使われ方が微妙じゃない......?
なぜ、さわおが歌ってる上からキャラクターが歌っちゃうの?ってのが、一番気になった。物語としてもわりと大事なシーンだったので本当に気になった。
あと、その曲流すその展開またやるの?っていう。ただ、これについてはオルタナが海外では6話に分けてTV放送とのことなのでOVAで毎度オチに使われたLITTLE BUSTERSを思えば目を瞑れなくもない。
でもやっぱり、劇場で、通しで観ているジャパニーズとしては気になる。
まとめ
イマイチだった点としてハルハラハル子がハルハラハル子じゃないと述べましたが、これってタイトルのオルタナ Alternative "もうひとつの選択、代わりとなる、異質な、型にはまらない" どおりなんですよね。
そうなってくるとあらすじからして、ハルハラハル子が2人に分裂している、などすでにぶっ飛んでいる、Progressive "進歩的な、革新的な"を意味するプログレはどうなってしまうのか、とても楽しみです。
あと、プログレではOVAでアマラオの声を演じていた大倉孝治氏がマスラオというキャラクターを演じます。大倉孝治氏は実写版ピンポンを観てから好きな役者の1人でもあるので期待大です。
オルタナはOVAファンにとってのリハビリかつ、プログレへの助走となる大事な作品だったんじゃないかと。
何より、17年も前の作品を掘り起こして、大勢の方が携わってフリクリをもう一度作ってくれたのが嬉しかった。
Blu-rayが出たらネタバレ込みの感想を書こうと思います。
プログレ、観てきました。