超光電人グリッドマンを観ていたあの夏、おそろしい場所に連れていかれました

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SSSS.GRIDMAN -> 超光電人グリッドマン -> 恐怖体験

SSSS.GRIDMAN、おもしろいですよね。

六花ママ役で新谷真弓さんも出演されているのでそちらの意味でもほくほくです。 www.kwsk.work

SSSS.GRIDMANといえば、もちろん超光電人グリッドマンを思い出しますよね?

私は当時、小学生の低学年の方で、夏休みに毎日、同じ団地のお友だちの家にみんなでたむろしては録画してある超光電人グリッドマンのビデオテープを鑑賞するなどしていました。

で、グリッドマンの思い出を書き綴りたいところなのですが、なんの病気なのかOPの映像以外にグリッドマンの記憶が一切なく、「夏休みに人の家でたむろして遊ぶことのメニューのひとつにグリッドマンがあった」というただそれだけしか覚えていません。

しかし、グリッドマンと強烈に結び付いている記憶がひとつあります。

たむろしているメンバーの年上の兄さんたちに廃病院に連れていかれたということ。

あの時。しちほだ少年が何を感じたのか。

文字におこしてアーカイブしたいと思います。

 

あの日観たグリッドマンのサブタイトルを僕はまだ知らない

僕は母親の作りおきの昼食を早めにいただいた後、いつものように同じ棟に暮らすひとつ年下のCくんの家に遊びに出かけた。

ご自由にどうぞ、とでも言うかのようにCくん宅の玄関に鍵はかけられておらず、僕は、おじゃましまーす、と少し大きな声を出して家にあがった。

すでに、僕より6つ年上のYくんと3つ年上のKくんが居間でくつろぎながらスーパーボンバーマン2をプレイしていた。

この頃はスーパーファミコンのマルチタップを持っていれば、それはもうそれだけでヒーローみたいな扱いで、マルチタップとスーパーファミコンの最新タイトルを保有するCくんは、そりゃあもう崇め奉られるかのような扱いだった。

おまけにご両親は日中、仕事で家にいないとなれば子供たちの格好の遊び場だ。

 

兄さん二人はボンバーマンに疲れたといい、駄菓子を頬張り始め、Cくんはゲーム中断するなら録ってあるグリッドマンを観たいとテープをセットし再生し始めた。

お馴染みのオープニングが流れ始める。

 

グリッドマンにあまり興味のない6つ年上のYくんが中学校界隈でのできごとを話し始めた。

Yくんの中学校まわりの話は、男女のちょっとえっちな話から不良同士の喧嘩まで幅広いトピックを揃えていて、いつも刺激的でおもしろい。

 

今回のYくんの話はこんな内容だった。

 

自転車でも相当に時間がかかる遠い土地の病院。そこは取り壊しが決まっており、現在は廃病院となっている。

Yくんの同級生のとあるグループがつい先日、肝試しに廃病院に侵入した。

1階はただの受付でこれといったもはなかったが、フロアを見回していると地下へ続く階段を見つけた。

用意周到に懐中電灯を持ってきていた彼らは暗闇の地下へ臆することなく進んだ。

ある扉を開けると、突如として大きな銭湯の湯船のようなプールのようなものが広がっていた。

水のようなものがはられているのは分かったが、プールの中はよく見えない。

一歩踏み出し、懐中電灯をプールに向けると、なんとプールの底を覆うように遺体が整列していた。

彼らが、やべぇよ、これ絶対にやべぇよ、と狼狽えていると、上の階より

ああああああああああああああああああ

と、男の叫び声が聞こえてきた。

これにはいよいよ辛抱たまらず、もと来た道を一目散に駆け出し、病院から脱出した。

廃病院を飛び出した彼らがふと建物の上層の方へ振り返ると、電気がとおっておらず真っ黒なはずの窓ガラスのひとつが、ちろりと光り、何者かと目を合わせてしまった感触を覚えた。

 

Yくんのこの話しに震え上がるCくんと僕。

小学生低学年にはちと刺激が強すぎる。

一方、3つ年上のKくんは、おもしろそうだと目を輝かせている。

嫌な予感がした

 

そして、廃病院へ

俺も行ってみたいとKくん。

待ってましたとばかりにYくん。

僕は留守番しないと怒られるからと断るCくん。

連れ去られる僕

 

家を溜まり場にされたり、いいように使われているだけと思いきや、こういう時に頭がよく回るCくん。

かたや、僕はクローズドコミュニティに生きる子供らしく、強めのお誘いを断れずに泣く泣く肩を落としながら自転車で長い旅路に出る羽目となった。

 

先ほど耳にした恐怖体験を自分も味わうのかと思うと頭のなかがぐにゃりとして、夏の暑さと相まって、もうなにがなんだか分からない状況だった。

事実、相当に距離があったはずの道中の記憶がほとんど抜けてしまっている。

 

正午ごろにCくん宅を出てしばらく、Yくんの先導によって、見知らぬ道にも関わらず廃病院にはたいしたトラブルもなく到着した。

廃病院が見えてくる辺りのガードレールにそって自転車を停める3人。

Yくんが同級生から聞いた話では、病院関係者か解体業者か分からないが見回りの人間がいるらしく、正面玄関まで自転車に乗って、というわけにはいかなかったのだ。

歩いて廃病院の方まで出て、正面玄関に差し掛かるころ、物陰に隠れながら玄関口の方に目をやった。

経験者の言うとおり、見回りの2人の大人が立っていた。

その2人の奥にそびえる廃病院には、ぐるりと板状のフェンスが立てられていた。

どうやって見回りの目をそらすかなどをYくんとKくんが話し合っているうちに、休憩なのか交代なのか、2人の大人はそろってどこかに向かって歩き出した。

見回りが見えなくなった瞬間、今だ突っ込むぞ、とYくん。

3人は一斉に駆け出し、正面玄関から反時計回りに廃病院の裏側を目指した。

 

フェンスの森

裏側に入るとあたりは森のように木々が生い茂っている。

もう、この雰囲気だけでもどこからか誰かに見られているような気がして僕は腰が引けてしまった。

恐れを知らないのか、または頼もしくあって欲しいという僕の願いからか、落ち着き払って見えるYくん。

Kくんは落ち着かないが、怖いからというよりかは、これからちょっと悪いことをしちゃうぞ、という感じを楽しんでいるように見えた。

ひとり怖がる僕を見て2人のお兄さんはけらけら笑っていた。

 

ぐるりと立てられたフェンスが網状であれば、3人とも登って簡単に越えられるのだが、板状のフェンスではなかなか難しい。

それが正面玄関からずっと続いていた。

フェンスが立てられているという情報はなかったので、Yくんの同級生が侵入したことが関係者に知れたせいかもしれない。

もしくは、今の僕らのように真似したものが見つかったのかもしれない。

森のような裏庭らしき土地を板状のフェンス沿いに進むと、フェンス下の土がぼこっとえぐれている箇所を見つけた。

フェンスとの間に生じた隙間は中学生男児には小さい。

小学生高学年の男児にも少し小さい。

 

となると、ここから中に入れるのは僕ひとりというわけだ。

それを悟って目の前が真っ暗になる感覚がした。

 

行け行けと囃し立てるお兄さん2人。

ここで強情に突っぱねて怒らせて、帰りの道も分からないというのに、こんな遠方の地に置いていかれてしまったらと思うと、もう行くしかなかった。

 

あぶらぜみとひぐらしのなく頃に

僕は意を決してフェンス下の隙間に頭を突っ込んだ。

正面に顔を上げると目の前に廃病院。

うつ伏せ状態の僕の目線と同じ高さに小さな窓が並ぶ。

地下部の換気、採光のためのものだろうか。

中々お腹から先が抜けずバタバタしていると窓に違和感。

目の前に並ぶ真っ暗な窓ガラスのひとつがちろりと光った。ように見えた。

その直後、誰かと目が合ってしまっている感覚に襲われる。

その上、どこからともなく、お兄さん2人以外の、無数の視線を感じる。

 

動くことができなくなり、

あ あ あ あ あ あ

言葉にならない音が僕の喉から漏れていた。

 

さすがに異変と感知したのか、先ほどまでへらへらと囃し立てていたお兄さん2人が「しちほだ!大丈夫か!動けないのか!?」と僕の尻や足を叩く。

4、5滴の小便をちびったうえ、体に力が入らなくなっている僕の体を引っ張りあげてくれると、Yくんが「しちほだ、ごめん!もういいよ!これマジだよ!このままここにいたら絶対にやばい!」と早口で帰路につくことを提案する。

Kくんと僕は返事をする余裕がなかったが、廃病院にぐるりと立てられたフェンスを、今度は時計回りにそって正面玄関の方に歩み出し、帰路につくことに同意する意思を示した。

 

このできごとはほんの一瞬のつもりだったが、いつの間にか日は傾き始め、あぶらぜみの鳴き声に混ざってひぐらしの鳴き声も聞こえてきていた。

それと同時に。

コーン。コーン。コーン。......。

あまり聞き覚えのない音がずっと鳴っている。

 

日没

フェンスにそって正面玄関の方へ戻る。

先ほどのフェンスとえぐれた土の隙間の場所からは距離が離れてきたこともあり、平静を取り戻し始める3人。

行きでは見回りがいないうちにと走ってきたため目に入っていなかったが、正面玄関の方とは別に廃病院に繋がる道があったことに気が付く。

こちらもまた森のように木々が生い茂っている。

正面玄関を突破するよりも隠れることのできる場所も多く、こっちから入ってくれば楽だったなどと話していると木々の繁る道にロッジのようなものが建っていることにも気が付く。

木々に夕陽が遮られ、暗くてよく見えない。

じっとロッジに目を凝らすと人影が浮かんできた。

あまり聞き覚えのない、コーン、という音は知らぬ間に止んでいた。

人影から視線を感じ、固まってしまう3人。

目をそらすことができず、人影をさらにじっと見ていると斧のようなものが手にあるのが見えた。

斧だ!!!

Kくんが叫ぶとようやく固まっていた体が動き、誰の合図でもなく、自転車の置いてあるガードレールまで全力疾走。

 

そのまま自転車で走り出し、街が薄闇に飲まれる頃、無事に団地までたどり着いた。

帰りの道、誰ひとりとして言葉を発さなかった。

 

廃病院について

これ、トラウマになりかけた恐怖体験で、本稿を書き始めるにあたって、この廃病院についてネットで資料を漁っている際にフェンスに囲まれた廃病院の写真が出てきたんですが、この時の記憶がフラッシュバックして頭がぐらっとしました。

廃病院に連れていかれる直前にグリッドマンを観ていたから、記憶が結び付いているというのもあるですが、もうひとつ強烈にこの廃病院のことを思い出すファクターがあって。

SSSS.GRIDMANでは、西武線がたびたび描写されますが、この廃病院の最寄りは、西武線のとある駅なのです。

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出典:https://www.seiburailway.jp/fan/zukan/101-301/index.html

 

この廃病院には心霊スポットたる理由がありまして。

こちらの病院は、ある病におかされた方たちの療養所として建てられました。

当時は、効果的な治療法がなく、療養所に集められた患者は、命の灯が消え行くまでの苦しい時間をただただ堪えるしかなかったそう。

自然豊かな地で療養を、ということで病院の裏側が木々に囲まれていたようです。

現在では建物は取り壊され、跡地が公園となっていますが、いまだに都内最強の心霊スポットであると聞きます。

あの刺すような視線は、この地に残るものの、そっとしておいて欲しい、という意思だったのでしょう。

いつか跡地の公園の近くに立ち寄ることがあれば、いたずらに踏みいったことを謝りに、手を合わせに伺いたいと思っています。

 

斧を持つ人影については、廃病院の横にロッジが建っていて、薪を割るのか、というのがまったく腑に落ちないので、恐怖がピークに達した3人の共同幻想だったのかもしれません。

ちなみに、この廃病院での恐怖体験の晩、Cくんや他にも団地の子供たちを集めて肝試し大会を開催したんですが、主宰のYくん、Kくんの立ち直りの早さというか、肝の据わりようというか。

良くも悪くも、このお兄さん2人が団地にいたころは、刺激に事欠かない幼少期でした。

 

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